自分が子どもだった頃、おせちは好きではなかった。

ただひたすら栗きんとんと、伊達巻を貪り食べていた記憶しかない。

それぞれのおせち料理に意味があることも教えられ、日本の伝統の料理ということも教えられ、お正月はおせちを食べないと他に食べるものがないと言われ、確かにその頃は食料品がお正月には買えない状況だったと思う。

「トーストが食べたかったのに。」「納豆ご飯が食べたかったのに。」と母に文句を言っていたこともうっすらと記憶にある。

ただ、おせち料理の美学的な要素の印象はとても深く、美しいものだという記憶は自分にとってとても強いもので、お正月が好きだった。

お年玉でもなく、親戚が集まって賑やかだとかでもなく、お正月の空気とかおせち料理の色合いとかそんな雰囲気が好きだったのかもしれない。

おせちが好きではなかった子どもが、今ではおせち料理を毎年作っている。

今は、自分の子どもから同じことを言われているが、必ず作るようにしている。

そして母から言われたことと同じことを自分の子どもに言っている・・・

一つ違うのは、今では食料品がお正月に買えなくて食べ物がないという状況がほぼないことだけ。

それが伝統の継承ということなのか。

例え「トーストが食べたかったのに。」「納豆ご飯が食べたかったのに。」と言われたとしても、色鮮やかなおせちを囲める幸せは毎年続けていきたいと思う。

Follow me!